第四診


「過敏性腸症候群との付き合い方」
(私)
この絵を見ながら、これからどうしたらいいかを考えてみると、水槽の中の金魚の気持ちになって、金魚が快適に過ごせるように考えてあげればいいということになります。

(会社員)
なるほど、それなら、とにかく急な水温の変化を繰り返す事が一番困るって事になりそう。

(私)
まさしくその通りです。
そこで、どうすれば水温の急な変化を起こし難くできるかってことなのですが、とにかく水槽の水を
出来るだけいっぱいの状態に保つ事が、まず第一となります。
つまり、体力を落とさないように気をつける事です。
次に、水槽の周りの気温があまり暑すぎたり、冷た過ぎたりしない様に気をつける事。
つまり、腸の動きを乱してしまうような生活の負担を意識して減らす事です。
そして第三に、氷片や熱湯に頼らず、冷水かぬるま湯を必要に応じて出来るだけゆっくり入れて、
焦らずに少しずつ温度を馴らしていく事。
つまり、痛み止めや下剤などの強い効果を持つ薬の連用を避けて、穏やかな作用を持つ薬を安定して使ってあげることで、体の状態をゆっくり変化させていく事です。

(会社員)
へー、今までは、出来るだけ強い薬を短期間で使って、早くその症状をとるの良いと思っていたんだけど、逆なんだ。

(私)
強いお腹の痛みに苦しんでいる時とか、何日も便秘してお腹がはじけそうになっている時などには、もちろん痛み止めも下剤も使います。
しかし、そうやって強い薬で強制的に体調を安定させようとしても、先ほど説明したように、熱すぎ
冷た過ぎの往復ビンタ状態となって、かえって苦しい事になってしまいます。
ですから、そういう強い薬で急に状態を変えずに済ませられるように、体と周囲の環境を安定に保つことこそが大事ということになります。

(会社員)
そう言われれば、まあ、そうなんだけど・・・
でも、色々あるんだよね、仕事だとか、付き合いだとか・・・

(私)
それもその通り、生きていくという事は、常に変化していくということで、自分の思う通りばかりでは
ないのが当然です。
場合によっては、体を壊す事が分かりつつも、やらなければならない事だってあります。
その中で、気をつけられる分だけ自分の体をいたわって、なお不足する分を薬で手助けしてもらう
と考えてください。
残念ながら、自分で自分の体をいたわる事なしに、「薬だけ飲めばすべて解決」というわけには
いかない物なのですよ。

(会社員)
あ、やっぱりそうなのね。
今まで、体に合った薬さえ飲めば「チチンプイ」ですべて解決できるものだと思っていたから、
症状が落ち着かないのは、体に合わない薬を出されたせいだと思っていたんだよ。

(私)
薬を飲むことで、今、目の前にある苦しさを早く楽にさせてあげる事は出来ます。
また、薬を飲み続けることで、同じ苦しさが起き難い様にしてあげることもできます。
でも、どんな薬を飲んでも、その苦しさが起きるような事をすれば、やっぱり苦しくなってしまうもの
なのです。
たとえて言うと、紙をライターであぶると、紙が焦げて来て最後は燃えてしまいます。
紙が焦げ始めた時に、急いで水をかけて濡らしてあげれば、それ以上焦げるのを防ぐことが
出来ます。
また、あらかじめ紙を濡らしておけば、ちょっとライターであぶった位では、簡単には焦げない
ようにする事も出来ます。
でも、いくら紙を濡らしても、しつこくあぶり続ければ、やっぱり焦げ始めてしまいます。
つまり、肝心なのは、紙を濡らす事なのではなくて、ライターの火を消してあぶらない様にする事
なのですよ。

(会社員)
うーーん、ちょっとだけ我慢が出来ればずっと楽に過ごせるってことは、分かっている事なんだけど、でも、いつもやりたい事の方が優先になっちゃうんだよね。

(私)
その我慢は、誰の為でもない、ご自分が楽に過ごせるようにするための物なのだという事をご理解ください。

★前に戻る                       ★次に進む

[プロローグ戻る]